極彩色

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そして夢オチ

本田はお昼になると、いそいそと鞄から取り出したお弁当の包みをかかえて教室を抜け出した。
本田が向かったのは、校舎の裏の林を抜けた先の小高い丘の上。
そこは、学校の敷地内でありながら、あまり知られていないようで、誰もいない。
日常の喧騒から切り取られたような、静かなこの場所でお昼ご飯を食べるのが本田は好きだった。

本田は、丘の上に生えた一本の木の幹を背に腰を下ろした。
木の葉の隙間から差し込む太陽の光が、さわやかな風に吹かれてゆらゆらと揺れる。
ご飯を食べたらお昼寝をするのも気持ちがよさそうだ、と一人満足そうに頷いた本田は、膝に乗せたお弁当の包みを開いた。
今日の昼飯は、昨日の晩に炊いた茶飯で作ったおにぎりと、林檎がひとつ。
取り出したおにぎりを、さあ食べようと口をあけたところで、本田の手からおにぎりはするりと転げ落ち、あれよあれよというまに、ゆるやかな丘を転がり始めた。
「ああっ、おにぎりが!」
本田は転がるおにぎりを追いかけた。

ころころ転がるおにぎりは、それほど速くもなく、手を伸ばせば届きそうなのに、あと少しのところで本田の手をすり抜ける。
もどかしい気持ちになりながら、本田はおにぎりを追いかけた。
「ま、まって…おにぎり…」
ただでさえ運動不足なからだに、おにぎりを拾おうと中腰になりながら坂道を下るのは、なかなかに過酷で、本田は息も絶え絶えだ。
そのとき、おにぎりの転がる先に木があるのが見えた。
あの木にぶつかれば、おにぎりは止まる、と本田はほっとしたが、そんな本田の希望は儚くも砕け散った。
よく見ると、木の幹の根元に、大きな穴があいていたのだ。
なんとしてもあの穴に落ちるまえに、と本田は必死になって追いかけた。
しかし、そんな本田の願いもむなしく、無常にもおにぎりは穴へ吸い込まれていった。

「ああ…わたしのおにぎり…」
一足遅く追いついた本田は、ぜえぜえと息を切らしながらへたり込んで、おにぎりの消えた穴を見つめた。
しばらくして少し息が落ちついた本田は、穴へにじり寄り、覗いた。
穴は真っ暗で何も見えなかった。
これではもう、おにぎりはあきらめるしかないな、と本田は残念な気持ちで穴から離れようとしたそのとき、本田は手を滑らした。
「え…?」
本田は、状況を理解する間もなく、吸い込まれるように穴に落ちた。

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