極彩色

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

そうだ、電気屋に通えばいいんだ。

午後になって降り始めた雨は、夕方になる頃には雪に変わり、歌舞伎町の町を薄ら白く染め上げていた。
その雪、夜になっても止む気配を見せず、止むどころかさらに強く降り積もる。
夜のニュースでは、気象予報士のおじさんが、今年一番の積雪になるでしょうと、天気図を指差しながら話している。
夕飯の終わった万事屋では、新八が食器の洗い物をしていた。
台所の窓にバリパリと雪が当たる音がする。
寒がりな銀時は、半纏を着こんでコタツから出てこない。
さすがに雪の降る日の板の間は、足元から冷える。
食器を洗いながら新八は右足で左足をこすった。

「はぁーあったかい…」
洗い物を終えた新八は、コタツにもそりと入ると、ほっと息をついた。
冷たい水にさらされて冷え切った手をコタツの中でこすり合わせる。
芯まで冷えた手は、なかなか温まらず、じんわりと痺れが広がった。
新八は、体温の戻らない手を、コタツの中にある、銀時の足にぺたりとつけてみると、銀時はちいさくギャッと叫んで足をひっこめた。
「てめっ、何すんだ新八!」
コタツに入って寝っ転がっていた銀時は、首だけ新八へ向けて、恨みがましそうに睨む。
「いや、なんとなく、つい」
全く悪びれない新八に、ついじゃねぇよ、寿命縮むじゃねぇかこのやろーとぼやきながら、銀時はよっこらせと上体を起こした。
ぐでっと机と仲良くなりながら新八を見る。
「なぁ、おまえ、今日泊まってけば?」
一瞬きょとんとした新八は、しかしすぐに眉を下げて苦笑した。
「いえ、今日は帰りますよ」
「ふーん」
銀時は、それ以上言及せず、興味を失ったようにくぁとあくびをした。

「新八、帰るアルか?」
新八が荷物をまとめていると、お風呂から出てきた神楽が、タオルで髪の毛をふきながら言った。
「うん、今日は帰るよ」
「新八はトロいアルからな、転ぶんじゃねーぞ」
「うん、気を付けるよ」
荷物を肩にかけた新八はよいしょ、と立ち上がって、玄関に向かった。
その後ろを神楽が付いていく。
すると、羽織を着た銀時が和室から出てきた。
「あれ、銀さんどこ行くんですか?こんな寒いのに」
「んだよ、別にどこだっていいじゃねぇかよ、コンビニだよコンビニ」
銀時は、玄関に腰掛けて、ブーツを履いた。
「じゃあ、僕は帰るけど、神楽ちゃん、今日は冷えるから、ちゃんと暖かくして寝るんだよ」
「わかってるネ。新八こそ風邪ひくなよ」
「うん、じゃ、おやすみ」
「おやすみヨ」
神楽にあいさつをして、新八は銀時と一緒に玄関を出た。
キンと冷えた空気が肌を刺して、新八は思わず肩を震わせた。
吐き出した息が真白く漂って消えた。

「わあ、結構積もってますね!」
道路に踏み出すと、ザクっと、足首くらいまで埋まり、新八は思わず声を上げた。
「神楽ちゃん、明日喜ぶだろうなぁ」
新八は、少し先を歩いている銀時に、足どりに気を付けながら小走りで近づいて並んだ。
そんな新八を、銀時はちらりと見た。
「転ぶんじゃねぇぞ。…て何笑ってんだよ」
「いや、それ、神楽ちゃんにも言われました」
そんなに僕たよりないですかねぇ、と新八が呟くと、新八だからな、と銀時が言った。

深々と降り続ける雪のなか、銀時と新八は言葉もなく歩く。
いつもは騒がしい街も、まるで雪に音が吸い込まれてしまったようにとても静かで、あたりには、銀時と新八の踏みしめる二人分の足音だけが響いた。

「じゃあ、僕はここで」
分かれ道で止まった新八に合わせて、銀時も止まった。
相変わらず何を考えているのかよくわからない銀時だが、おそらく心配して付いてきたのだろう、と新八は思った。
「おう、気をつけて帰れよ」
「銀さんも、早めに帰ってくださいね。神楽ちゃん、女の子なんですから」
そう言った新八を、銀時はじっと見た。
「…銀さん?」
無言になった銀時に声をかけた新八へ、銀時は手を伸ばしてその髪に触れた。
銀時の手は、くしゃりと新八の頭をかき回し、そして新八の頬をするりと一度撫ぜて離れていった。
「…じゃあな」
「え、あ、はい、また明日」
なんでもなかったように、くるりと踵を返した銀時を、新八は、その背中が見えなくなるまで眺めていた。
銀時が触れた頬が、熱かった。

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。